【この記事は、壱岐ライターズクラブ鬼凧のメンバーMARさんによる取材記事です。】
8月4日(日)壱岐の島ホールにて開催された、壱岐なみらい創りプロジェクト主催のプログラム「壱岐 i.club Summer Program! 2019(以下、iSP!2019)」の発表会。
今回は、大学生と高校生で構成された5グループの発表内容をレポートします。
企業訪問で見つけた課題とその解決について3日間のグループワークで議論し、アイデアを出し合った成果はどのようなものだったのか、壱岐市長の他、各グループが訪れた企業の担当者や他グループの熱い視線が向けられる中、各グループ共大変興味深く、斬新なアイデアが出されました。
【1グループ目】
チーム名:ポジティブアルマゲドン
キャッチコピー:ボーッと飲んでんじゃねーよ!
アイデア名:壱岐の焼酎を食べたい
協力企業:壱岐の華酒造
テーマ:経済
SDGsゴール:8(働きがいも経済成長も)
[アイデア詳細]
焼酎=飲むものという先入観で購入者が限られる焼酎を、もっと幅広いジャンルや色んな世代の人に楽しんでもらいたい。そのために壱岐の焼酎蔵・7蔵や飲食店、島民から壱岐焼酎を取り入れた料理のレシピを募集して、積極的に飲食店で売りに出すというアイデアです。
[スキットのストーリー]
・アイデアがない世界
飲食店に訪れた若い観光客が飲食店で壱岐焼酎を勧められますが、苦手・飲めないという理由で断ります。たまたま店内にいた地元のおじちゃんが、「最近の若者は焼酎ば飲まんとたいね。飲んでもらいたいばってどうやったら楽しんでもらえるとやろうか…」と首をひねります。
・アイデアがある世界
飲食店に訪れた観光客が飲食店で壱岐焼酎を勧められ断ったところ、壱岐焼酎を使った料理を紹介され「じゃあそれにします」とそのメニューを選びます。「食べやすい」「美味しいですね」と好評。「家でも作ってみたいから1本下さい」の声に地元のおじちゃんも嬉しそうです。
[総評]
どうしても私達は焼酎を飲むことを前提にPRをしてきたので、食べるという発想が面白いと思いました。今後どういった料理として考えていくのかなというところですね。非常に面白いアイデアで勉強になりました。
(壱岐市SDGs未来課小川課長)
[ライター感想]
島内でもお酒が好きな人は「飲むなら壱岐焼酎!」という人は多いですが、お酒が飲めない人には縁がないもの。料理にも使えるとなればさらに消費に繋がり、飲めない人にも勧めやすくなりそうです。どんなメニューが出来るのかも楽しみです。
【2グループ目】
チーム名:ジェントルマン
キャッチコピー:真珠に神が宿る
アイデア名:タッチミー神珠
協力企業:上村真珠
テーマ:経済
SDGsゴール:8(働きがいも経済成長も)・14(海の豊かさを守ろう)
[アイデア詳細]
フィールドワークにおいて、まず「自分たちが真珠のことをよく知らない。それは真珠が高価でいつもショーケースの中にあるから、遠い存在なんだ」と感じたというグループのメンバー。壱岐島内の神社のお守りを真珠で作る体験ができれば、高価で大人が身につけるアクセサリーというイメージの真珠を身近に感じてもらえるのではないか、と考えました。
[スキットのストーリー]
・アイデアがない世界
場所はお土産屋さん。娘と母親が壱岐のお土産を買いにきて、店員にどんなお土産があるのか尋ねます。「ウニや真珠があります」との答えに「三重の真珠は聞いたことあるけど、壱岐の真珠は知らないわ」「真珠ってお母さんがつけてるイメージだよね」という母娘の会話。結局ウニをお土産に買って帰ることにしました。
・アイデアがある世界
同じくお土産さんで壱岐のお土産について尋ねる母娘。「真珠でお守りが作れるんですよ!」と聞き、「じゃあそれにします!」と真珠のお守りを選びました。
[総評]
なかなかアイデアが浮かばなかったんですが、皆さんの柔らかい頭で、若い人たちにもっと真珠に触れてもらうためのアイデアを考えていただき感謝します。今後もいい未来を作ってください。
(上村真珠担当者)
[ライター感想]
体験型観光は人気なので、発想はとても良いと思います。神社と真珠を結びつけるアイデアもとても斬新。神珠で「しんじゅ」と読むのもよく考えているな、という印象です。自分で作ったものならなお、大事に身につけるのではないでしょうか?そのお守りを見る度に壱岐のことを思い出してもらいたいです。
【3グループ目】
チーム名:one for all, all for one
キャッチコピー:皆の知らない「ホテルの情熱」
アイデア名:IKI物語
協力企業:ステラコート大安閣テーマ:経済
SDGsゴール:8(働きがいも経済成長も)
[アイデア詳細]
ホテルに宿泊する観光客にサービスを提供するだけでなく、地域の人とホテル側のストーリーを伝えることで、壱岐の良さをもっと知ってもらい、もっと好きになってもらいたい。そのためにストーリーの動画を作り、沢山の人にその動画にアクセスしてもらえるように、食事するときに食器の下に敷くペーパーにQRコードを載せ、双方の熱い想いを伝える、というアイデアです。
[スキットのストーリー]
・アイデアがない世界
ホテルのレストランに来た観光客。食事をして帰ります。
・アイデアがある世界
ホテルのレストランに来た観光客。ペーパーに記載されているQRコードに気付いてアクセスしてみます。するとホテルの料理人がアスパラ農家へと出向いて食料調達のやり取りをしている動画が流れました。
[総評]
大変斬新なQRコードのアイデアを出していただいて感謝しています。ホテルとしてもSDGsのゴールの中でも旅館や食品ロスに関るものを意識して取り組んでいきたいところですので、今後ともよろしくお願いいたします。
(ステラコート大安閣:木下氏)
【ライター感想】
フィールドワークで感じたホテル側の熱い想いを宿泊客に伝えたい。担当者の想いがグループのメンバーに伝わったからこそのアイデアだな、と感じました。サービスを提供し受けるだけの関係性から、さらに一歩踏み込む関係を作るきっかけになるのではないでしょうか。
【4グループ目】
チーム名:Summer Challenge
キャッチコピー:May I help Iju?
アイデア名:手伝います!あなたの家のリノベーション!
協力企業:市民団体たちまち・空き家相談室イエマチ
テーマ:経済
SDGsゴール:11(住み続けられるまちづくりを)・12(つくる責任つかう責任)
[アイデア詳細]
リノベーション出来る空き家があるなら移住したいけど、一人での移住の準備は大変だし、地域の人たちとうまくやっていけるか心配…そんな不安を解消するべく、リノベーションを地域の人達でサポートする体制を整えていったらいいのではないか?と考えました。移住者の負担も減り、地域の人たちとの関係性も築くことができます。実際に地域の人達と空き家をリノベーションして、地域のフリースペースとして活用し、空き家利用促進活動の拠点としても動き始めた「たちまち」・「イエマチ」のような活動を島内の他の町にも広げ、移住者が相談しやすい環境を作っていくというアイデアです。
・アイデアがない世界
一人で空き家をリノベーションする移住者。移住を考えて相談に来た人もその様子を目の当たりにして、移住することを思いとどまってしまいます。空き家の持ち主も、買い手がつかず困ってしまいます。
・アイデアがある世界
地域の人達と協力してリノベーションを進める移住者。その賑やかな様子を見て、移住の相談に来ていた人も移住を決断します。
[総評]
壱岐市も移住定住の対策として「たちまち」さんとも協定を結び、協力してその活動がうまく島内に拡がっていけばよいなと思っているところです。移住者の方が一番不安に思うのは地域の方との関わり方というところもあるので、今皆さん方から頂いたアイデアというのは、今後実現可能になっていくのではないかと思います。いいアイデアをありがとうございました。
(壱岐市SDGs未来課小川課長)
[ライター感想]
移住後の生活が想像出来るということは、移住のハードルを下げてくれる理由のひとつだと思います。地域の人達と一緒に移住計画を進められることは、移住後の生活にもプラスになることが多いのではないでしょうか。また昔建てられた家は、良い材料を使い、腕のいい大工さんが作った家が多く、とてもしっかりしています。リノベーションして、新しい活用方法を見出して生まれ変わった魅力ある空き家が、地域の活性化につながってほしいです。
【5グループ目】
チーム名:それいいね!
キャッチコピー:賞味期限、短い方買ったが良いっちゃない?
アイデア名:食べてほしーる
協力企業:スーパーバリューイチヤマ
テーマ:環境
SDGsゴール:4(質の高い教育をみんなに)・12(つくる責任つかう責任)
[アイデア詳細]
島内のスーパーで廃棄される多くの賞味期限切れの食品。食品ロスを減らすために、賞味期限が短い商品に「食べてほしーる」というシールを貼ることで、消費者に環境について意識付け、シールが付いている商品を積極的に購入してもらいたいと考えました。また市内の子ども達にシールのデザインを考えてもらうことで、環境について学習する機会もできます。
[スキットのストーリー]
・アイデアがない世界
スーパーで買物をするお客さん。牛乳を買おうとして、いつもどおり賞味期限が長い方を選びます。閉店後、廃棄しなければならない商品の量を見て「今日も廃棄がこんなにある。勿体ないなぁ」と呟く店員でした。
・アイデアがある世界
学校で生徒が「食べてほしーるのデザインできました!」と先生に渡します。先生はそのシールを持ってスーパーへ。店員は賞味期限が近い商品にそのシールを貼っていきます。お客さんが牛乳を買おうとして賞味期限をチェックしていると食べてほしーるが目に付きます。「環境のことを考えてこっちにしようかな」と、賞味期限の短い方を選んでいきました。閉店後、廃棄する商品がいつもより少ないことに気付いて店員も嬉しそうです。
[総評]
食べてほしーる、早速作ってもらいたい。値引きシールよりもそういったシールの方がいいんじゃないかと。食べてほしーるの購入者には値引きよりもポイントを付けたりとか、そういう形で協力していきたい。せっかくのアイデア、実現できるようにこれから頑張ってもらいたいなと思います。
(スーパーバリューイチヤマ担当者)
[ライター感想]
普段買い物をする立場としては、確かに賞味期限が長い方を選びがちです。自分の行動の先に何があるのか見えることで行動が変わるきっかけになる、そのきっかけ作りになるアイデアではないでしょうか。子どもたちもスーパーで自分がデザインしたシールに出会えたら嬉しくなりそうです。また、食べてほしーるの購入者には高ポイントを付けるという企業側のアイデアも購入者がメリットを感じられる方法で、よい相乗効果を生み出すのではないかと感じます。
皆さんには環境・社会・経済という3つのテーマで地域や企業の課題を見つけ、どのように克服できるのかアイデアを出し、自分たちで考えていただきました。壱岐としても一番頭が痛い人口減少問題をテーマにしていただいたチームもあります。それぞれが見つけた課題をどのように克服できるのかアイデアを出し、そのアイデアを実現するために初めの一歩をどうするのか、障壁をどのように克服するかを自分たちで真剣に考えていただいた発表内容で、私自身も大変勉強になりました。
また、SDGsを大きなテーマとして捉えていただいたことについては一番感謝申し上げたく思います。若い力でこのようなプログラムに取り組んでいただいたことは大変嬉しいです。実現するためには市民や事業所の皆さんと、行政がまさに三位一体となって取り組むことが大切です。
今回のアイデアや意見をしっかりと受け止め、実現に向けて進んでいきたいと思います。
参加された高校生の皆さんは、大学生と一緒に行動することで今までの人生が変わったのではないでしょうか?将来の進路にもかなり影響を受けることでしょう。この経験を糧にして次のステップへと羽ばたいていただきたいと思います。皆さんの成長を心から祈っています。本当にありがとうございました。
以上、5グループによる発表をご紹介しました。
皆さんは、壱岐にどんな課題があると思いますか?普段生活をしていると気付きませんが、「もっとこうだったらいいな」と何気なく思う気持ちがもっと壱岐を住みやすくするヒントになるかもしれません。
いつもと少し視点や意識を変えて、壱岐の島の日常を見つめてみてはいかがでしょうか?